知的財産権に関する慰謝料

このページでは、特許権、著作権、商標権、不正競争防止法違反などの知的財産権に関する慰謝料判例を扱います。不正競争防止法は、名前だけではわかりにくいかもしれませんが、ノウハウや顧客リストの盗用、ドメインの不正取得、有名なものとの誤認を惹起させる行為などを規制する法律です。

下記の平成21年(受)第1168号損害賠償請求事件は、退職後の競業避止義務について最高裁が判断した事例です。
「元従業員の競業行為が、社会通念上自由競争の範囲を逸脱した違法な態様で元雇用者の顧客を奪取したとみられるような場合には、その行為は元雇用者に対する不法行為に当たるというべきである」という原審の判断は認めつつ、本件では退職のあいさつの際などに取引先の一部に対して独立後の受注希望を伝える程度のことはしているものの、取引先の営業担当であったことに基づく人的関係等を利用することを超えて、
・営業機密に係る情報を用いたり
・信用をおとしめたり
などの不当な方法で営業活動を行ったことは認められないので「社会通念上自由競争の範囲を逸脱した違法なものということはできず、被上告人(元勤務先)に対する不法行為に当たらない」として、元雇用者会社の請求を退けました。

なお、上記判例では、退職後の競業避止義務に関する特約等はありませんでしたので、退職の際に、競業を行わないなどとする覚書を締結したりしていれば、違った結果になったかもしれません。

知的財産権の慰謝料に関する判例

事件番号等 慰謝料額 裁判で認められた弁護士費用 概要
平成21(受)1168 損害賠償請求事件 平成22年03月25日 最高裁判所第一小法廷 判決 破棄自判 名古屋高等裁判所 認められず   工作機械等の部品製造会社を退職した社員が競業する別会社を立ち上げ、退職した会社の取引先に営業を行って受注した行為が不法行為又は雇用契約に付随する信義則上の競業避止義務違反に当たるとして会社が損害賠償を求めた事案で、不法行為と認められなかった。
平成19(ワ)8023 不正競争行為差止等請求事件 平成21年04月23日 大阪地方裁判所 110万円(損害賠償) 10万円 2年以上、商品名等に無断で名称を使用されたことが不正競争防止法違反となり、損害賠償が認められた。
平成20(ワ)21343 損害賠償等請求事件 平成21年02月19日 東京地方裁判所 30万円 5万円 著作物を勝手に真似てHPに掲載され、著作者人格権の侵害により被った損害
平成19(ワ)4156 著作権侵害不存在確認等請求事件 平成20年12月26日 東京地方裁判所 200万円 20万円 盗作であると疑いをかけられ、TVで取り上げられたことが名誉毀損であるとして、TV番組1回につき100万円の慰謝料が認められた(原告:槇原敬之さん、被告:松本零士さん)。
平成20(ワ)7828 損害賠償 平成20年12月24日 東京地方裁判所 30万円   タレントが、その顔写真等を勝手に被告のホームページで公開されたことに対する精神的損害への慰謝料
平成24(ワ)24571 損害賠償等請求事件 著作権 平成25年7月16日 東京地方裁判所 著作権侵害に対する損害賠償として20万円。慰謝料として30万円   「海猿」「ブラックジャックによろしく」などの漫画の作者が描いた似顔絵を、天皇崇拝者と誤解する方法で使用され(ウェブに掲載され)たことによる、著作権侵害に対する損害が20万円とされた。著作者人格権を侵害されたこと及び原告の名誉毀損に伴う精神的苦痛に対する慰謝料はそれぞれ15万円(計30万円)認められた。

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