慰謝料に関する民法の改正点

平成32年(2020年)4月1日から民法のうち債権法の部分で大きな改正があります。その中で慰謝料に影響しそうな部分につき、取り上げてみたいと思います。

消滅時効

新しい民法では、消滅時効に関する規定が整理されます。慰謝料の性質が不法行為による損害賠償請求権(交通事故、暴力、不貞行為など)である場合、一般原則として、被害者またはその法定代理人が損害および加害者を知った時から3年間、また、不法行為の時から20年間が時効期間となります。期間は現在も改正後も同じですが、現在、20年は除斥期間(中断できない)であると解釈されているところ、消滅時効期間に改められます。

ただし、人の生命・身体を害する不法行為による損害賠償請求権は、被害者またはその法定代理人が損害および加害者を知ったときから5年間が時効期間となり(新724条の2)、これと不法行為の時から20年間という客観的起算点からの時効期間の通則とが併用されます。人の生命・身体を害する不法行為の場合は少し伸びるわけですね。

また、債務不履行による損害賠償請求権であって人の生命・身体の侵害によるものは、債権者が権利を行使することができることを知った時から5年という通則の時効期間に加え、権利を行使することができる時から20年という客観的起算点からの時効期間の特例とが併用されます。今は債権ならMAX10年で時効になりますが、改正後は人の生命・身体の侵害によるものに限って20年に伸びます。

施行日前に生じた債権の消滅時効

それでは、新しい消滅時効の制度はいつから適用されるのでしょうか?

一般論

新法の時効期間が適用される債権は、施行日以後に生じた債権になります。例えば、施行日より前にした売買契約に基づいて生じた代金債権の消滅時効の期間は、なお従前の例によります。

不法行為に基づく損害賠償請求権

不法行為に基づく損害賠償請求権は、新法施行日前に消滅時効期間が経過していた場合は、新法が施行されても時効の完成が覆ることはありません。生命・身体を害する不法行為による損害賠償請求権も同様です。

反対に、現民法724条前段のの3年の消滅時効の期間が新法施行の際に経過していない場合は、生命・身体を害する不法行為による損害賠償請求権の時効期間は、新724条の2が適用され、被害者またはその法定代理人が損害と加害者を知った時から5年に変更されます。

原子力発電所の事故による損害賠償請求権

原子力発電所の事故による損害賠償請求権については、「東日本大震災における原子力発電所の事故により生じた原子力損害に係る早期かつ確実な賠償を実現するための措置及び当該原子力損害に係る賠償請求権の消滅時効等の特例に関する法律」という特例法があり、民法724条の「被害者またはその法定代理人が損害および加害者を知った時から3年間」が「被害者またはその法定代理人が損害および加害者を知った時から10年間」と、また「不法行為の時から20年」が「損害が生じた時から20年」となっていて、新法施行後も同じです。

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