名誉毀損の慰謝料

言葉としてはよく聞く名誉毀損ですが、慰謝料としてはどのくらいの額が認められているのでしょうか?

従来100万円が限度とされた名誉毀損の慰謝料が、近年400万円・500万円が一つの基準となり、高額化する傾向があるようです(升田純「名誉毀損と名誉の値段の近時の動向」NBL No.914-2009.10.1)。

名誉毀損の慰謝料に関する判例

事件番号等 慰謝料額 裁判で認められた弁護士費用 概要
大阪高等裁判所 約1226万円の支払いと学校の半径200m以内の街宣禁止   (平成26年7月8日付時事通信ほか各新聞社の記事による)朝鮮学校周辺で街頭宣伝活動をし、民族差別をあおるヘイトスピーチ(憎悪表現)を繰り返したとして、京都朝鮮学園(京都市)が「在日特権を許さない市民の会(在特会)」とメンバーら8人に計3000万円の損害賠償などを求めた訴訟の控訴審判決。1、2審判決によると、在特会側は平成21年12月~22年3月に計3回、京都市南区にあった京都朝鮮第一初級学校(京都朝鮮初級学校に統合)周辺で街宣。学校が近くの公園を運動場代わりに不法占拠しているとして、「朝鮮人を保健所で処分しろ」などと拡声器を使って連呼し、動画をインターネット上で公開。あまりにひどい名誉毀損行為のため高額判決となったものと思われます。在特会側は最高裁に上告する模様。
平成24(ワ)11119 信用毀損行為差止等請求事件 不正競争 民事訴訟 平成24年12月06日 東京地方裁判所 50万円   被告(行政書士)がブログ等に原告(弁護士)を害する記事を書いたことが原告の営業上の信用を害する虚偽の事実を記載したとされ、記事の削除及び慰謝料の支払いが命じられた。
平成24(ネ)771 損害賠償請求控訴事件 平成24年12月21日 名古屋高等裁判所 その他 名古屋地方裁判所 100万円   ブログに商店を誹謗中傷する虚偽の記事を書いたことが当該商店の社会的評価を低下させたとして、慰謝料が認められた。
平成24(ワ)11119 信用毀損行為差止等請求事件 不正競争 民事訴訟 平成24年12月06日 東京地方裁判所 50万円   被告(行政書士)がブログ等に原告(弁護士)を害する記事を書いたことが原告の営業上の信用を害する虚偽の事実を記載したとされ、記事の削除及び慰謝料の支払いが命じられた。
平成23(ワ)4576 損害賠償請求事件 平成24年07月17日 大阪地方裁判所 100万円 10万円 美容外科・形成外科を開業する医師が、同業者の2ちゃんねるへの書き込みにより信用毀損・プライバシー侵害の被害を受けたとして、慰謝料と弁護士費用の支払いが命じられた。
平成22(ワ)9588 損害賠償請求事件 平成24年06月15日 大阪地方裁判所 600万円   原告が枚方市長であった期間に被告が発行した新聞記事により名誉を毀損されたことに対する慰謝料
平成18(ワ)23402等 不正競争行為差止等本訴請求事件 平成20年11月28日 東京地方裁判所 15万円 3万円 株主総会での発言が名誉毀損に当たるとして慰謝料が認められた例
昭和54年11月27日 大阪高等裁判所(判例時報961-83) 10万円   タクシーの乗客が運転手に「運転手は昔は駕籠かきやないか」などと20分余りにわたって誹謗侮辱的発言を続けたというケースで、10万円の慰謝料の支払いを命じた。cf.wikipedia(真ん中あたり。横山やすし「雲助」事件)
東京地方裁判所 66万円   テレビで岡田美里が真実でないコメントをしたことにより社会的評価に影響を与えたとして、叶姉妹が提訴。cf.wikipedia(真ん中より少し下。名誉毀損の項)
平成27年6月24日 東京地方裁判所(控訴)
判例時報2275号87頁
165万円(請求額1100万円)   原告は、平成25年に国民栄誉賞を受賞した元プロ野球選手・監督の息子で、原告自身も元プロ野球選手。被告は新潮社。(1)原告が父に無断でその所有物をコレクターに売却したこと。(2)父の通称名について、父の妻(原告の母)が代表取締役を務めていた会社が商標登録をしていたが、存続期間満了によって権利消滅した後、原告の個人事務所を運営する会社が商標登録をしたこと。(3)このような行為をした原告は「大バカ者」であると記事では論評されている。本判決では、(1)と(2)は、いずれも私人の私生活上の行状についての事実であり、公共性や公益目的は認められないと判示され、これらの記載を前提事実とする(3)も公共性・公益目的が否定された。ただし、(1)と(2)の真実性はいずれも肯定され、(3)の「大バカ者」も、論評としての範囲を逸脱した不相当な表現であることは否定された。
平成29年6月22日 東京高等裁判所 114万円   経済評論家の池田信夫氏にインターネット上で虚偽の情報を流されて、名誉を傷つけられたとして、国際人権NGOヒューマンライツ・ナウの事務局長をつとめる伊藤和子弁護士が損害賠償などを求めた裁判。池田氏側が「真実であること」を証明しなかったため、名誉毀損による不法行為にあたるとして、一審の賠償額の2倍にあたる計約114万円の支払いを命じた。一方で、謝罪文の掲載については棄却。cf.出典

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